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日本ジャーナリスト会議、JCJ大賞を大崎事件の鴨志田弁護士  JCJ賞を屋久島ポストなどに贈賞

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大賞『大崎事件は問いかける』、「冤罪を作り出す警察と検察への告発の書」と評価

JCJ賞の屋久島ポスト「離島記者」連載、「等身大の一人のジャーナリストの姿を通して、報じることの意味を改めて考えさせる連載」

2026年 第69回JCJ賞 贈賞式、計6作品が受賞

【上】JCJ賞の贈賞式に掲げられた横断幕【下】JCJ大賞の受賞スピーチをする鴨志田祐美弁護士(右端)と一緒に登壇する袴田秀子さん(右から2人目)、周防正行監督(同3人目)ら=2026年10月10日、東京都文京区の全水道会館、オンライン中継画面を撮影

新聞・放送・出版などにおける優れたジャーナリズムの仕事を顕彰する「2026年 第69回日本ジャーナリスト会議賞」(JCJ賞)の贈賞式が10月10日、東京都文京区の全水道会館で開かれた。

JCJ大賞は、鹿児島市生まれの弁護士で、「大崎事件」の第5次再審弁護団共同代表を務める鴨志田祐美氏が執筆した『大崎事件は問いかける――これからの再審のかたち』(かもがわ出版)が受賞。袴田事件で死刑確定後に再審で無罪となった袴田巌さんの姉・秀子さんや、痴漢冤罪をテーマにした映画『それでもボクはやってない』を制作した周防正行監督らが祝福に駆けつけた。

大賞に続くJCJ賞は、市民メディア「屋久島ポスト」の連載「離島記者 報道砂漠で闘う市民メディアの挑戦」など4作品が受賞した。「離島記者」を執筆した武田剛・共同代表は上京する直前にインフルエンザが疑われる症状を発症したため、贈賞式には屋久島からオンラインで参加した。

日本ジャーナリスト会議(JCJ)
戦後日本のジャーナリズムの発展をめざし、ジャーナリストの職能組織として1955年に発足した。初代議長は岩波書店の総合雑誌『世界』の吉野源三郎・編集長が務め、主要メディアで取材・編集活動をする1200人が参加。1958年にJCJ賞を創立し、約70年にわたって国内外で活躍するジャーナリストの活動を顕彰してきた。

「冤罪の根拠・証拠を示しながらの詳細にして鬼気迫る追及」

大崎事件は1979年に鹿児島県大崎町で男性の変死体が発見され、殺人・死体遺棄罪などの罪で服役した原口アヤ子さんが無実を訴え続けている事件。鴨志田弁護士はアヤコ子さんの冤罪を訴え、約20年にわたって再審請求の活動を続けている。

大賞の講評では、「いまや98歳になったアヤ子さんの冤罪を晴らそうとして伴走し続ける著者の、冤罪の根拠・証拠を示しながらの詳細にして鬼気迫る追及。これは冤罪を作り出す警察と検察への告発の書でもある」と高く評価された。

『大崎事件は問いかける――これからの再審のかたち』を紹介する「かもがわ出版」のウェブサイト画面

鴨志田弁護士「この受賞を再審無罪の最大の追い風にしたい」

これを受け、受賞スピーチに立った鴨志田弁護士は「大崎事件は間違いなく冤罪で、事件から47年も経って、まだ99歳の人が再審を闘わなければならない」とアヤ子さんの窮状を説明。この現実を多くの人に知ってもらいたいとしたうえで、「この受賞をアヤ子さんの生きているうちの再審無罪に、最大の追い風にしていただけたら、こんなに嬉しいことはない」と述べた。

袴田事件の袴田秀子さん「今度はアヤ子さんの番だよ」

また、祝福に駆けつけた袴田秀子さんは、「アヤ子さんとは本当にしょっちゅう行き会って、励まして『アヤ子さん、今度はアヤ子さんの番だよ』って言ってやるんです。そうすると大変喜んでくれましてね」と話し、再審への願いを語った。

再審に向けて、事件の再現動画を制作するなどして支援を続ける周防監督は、「鴨志田先生をとにかく応援しながら一生懸命、刑事司法について声を上げていこうと思っています。おめでとうございます」と称えた。

JCJ大賞に選ばれた鴨志田祐美弁護士(右端)を祝福する袴田秀子さん(中央)と周防正行監督=2026年10月10日、東京都文京区の全水道会館、オンライン中継画面を撮影

連載「離島記者」、町と対峙した10年「追及した問題の根深さがうかがわれる」

JCJ賞を受けた屋久島ポストの連載「離島記者」の講評では、「69本の記事からなる応募作は、屋久島町役場と対峙した10年にわたる取材を連載で振り返ったものだ。追及した問題の根深さがうかがわれる」としたうえで、「生活者でもある等身大の一人のジャーナリストの姿を通して、報じることの意味を改めて考えさせる連載であり、JCJ賞に値すると判断した」と評価された。

屋久島ポスト共同代表、新たな時代を担う「草の根メディア」のモデルケースをめざす

オンラインで出席した武田共同代表は、「住民有志と力を合わせて報道を続けてきた結果、不正や不祥事が絶えなかった町は確実によくなりつつあります」と報道の成果を報告。新聞各社が急速に衰退するなかで、全国の地域社会ではマスコミの目が届かない「報道砂漠」が広がっている現状を踏まえ、「屋久島ポストは新たな時代を担う『草の根メディア』のモデルケースになることをめざしています。そして近い将来、一つの地域に根差した市民メディアが全国各地に生まれ、マスコミと連携しながら、行政監視の報道を続けることで、民主的な社会を守る流れが広がっていくことを願っています」と話した。

JCJ賞の贈賞式にオンランで参加し、選考委員の上西充子・法政大学教授(左端)から講評を受ける屋久島ポストの武田剛・共同代表=2026年10月10日、東京都文京区の全水道会館、スローニュースの熊田安伸さん撮影

応募120点を各部門ごとに選考

今年のJCJ賞には120点の応募があり、「新聞(雑誌を含む)」「放送・映像作品」「ネットメディア」「出版」の部門ごとに選考。JCJ大賞1点、JCJ賞4点、JCJ特別賞1点の計6点が選ばれた。

JCJ事務局が発表した各作品に対する講評全文は次のとおり(敬称略)。

【JCJ大賞】

『大崎事件は問いかける―これからの再審のかたち』 鴨志田祐美 かもがわ出版

『大崎事件は問いかける――これからの再審のかたち』を紹介する「かもがわ出版」のウェブサイト画面

【講評】
なぜ、この悲痛な叫びが届かないのか。いったんは開きかけた再審の扉が、ふたたび閉ざされたのはなぜなのか。半世紀にも及ぶ無罪の叫びと、叩き続ける「再審の扉」。

家族の一員を殺害したとして逮捕された原口アヤ子さんの「大崎事件」の裏側には、障害者や女性に対する差別が薄暗く巣食っている。

アヤ子さんは冤罪を訴えながら懲役10年の刑に服し、出所後も無罪の叫びを止めない。

判決に不信を抱き、いまや98歳になったアヤ子さんの冤罪を晴らそうとして伴走し続ける著者の、冤罪の根拠・証拠を示しながらの詳細にして鬼気迫る追及。これは冤罪を作り出す警察と検察への告発の書でもある。

冤罪事件多発と、それに伴う今回の「再審法改正」への疑問を辿りながら、冤罪防止のための展望も視野に入れた本書は、まさに現代司法の根本に迫るジャーナリスティックな成果として、「JCJ大賞」にふさわしいと言うべきである。

【JCJ賞】4点(順不同)

連載「『国防』の陰で」 沖縄タイムス社

連載「『国防』の陰で」を紹介する沖縄タイムスのウェブサイト画面

【講評】
日本最西端――東シナ海に浮かぶ国境の島・与那国島(沖縄県)に、陸上自衛隊の沿岸警備隊が配備されて10年。台湾有事を煽る政権与党やマスメディア、また一般国民の多くは、沖縄を最前線、有り体に言えば戦場として位置付ける前提に躊躇がないように見える。日米の軍事基地の拡張も増強も、それゆえにこそ、‟南西シフト”なる術語を掲げつつ推進されているのではないか。

だが当然のことながら、現実の沖縄はゲーム盤などではない。大勢の人々がそれぞれの暮らしを営む、人生の大舞台なのである。沖縄タイムスは連載「『国防』の陰で」で、この二律背反に深いメスを入れた。

連載のための取材によって、数々のスクープも放たれた。近い将来の与那国島における地対艦ミサイル配備構想があることも明らかにされている。重武装の基地が明確な攻撃対象となる現実は改めて指摘するまでもない。

地元紙を真の地元紙たらしめている有意義な仕事だ。願わくは、これを足掛かりに中央の新聞や放送局、雑誌等々が追い付け追い越せと切磋琢磨し、同様の問題意識が全国的に共有され得るような報道界と社会であってほしい。否、そうでなくてはならないと言いたい。

悲しみのピーヤ 海底炭鉱で待つ183人 山口朝日放送

悲しみのピーヤ 海底炭鉱で待つ183人(山口朝日放送)

【講評】
太平洋戦争開戦直後の1942 年2月3日、山口県宇部市の海底炭鉱・長生炭鉱で凄惨な水没事故が起き183 人が犠牲となった。その7割以上136人が、当時国策で朝鮮半島から動員された人々だった。会社は解散して、遺骨は、80年以上経った今も海底に放置されたままとなっている。

国による調査が進まぬ中、「犠牲者と遺族の悲しみを和らげたい」と遺骨収集のため独自の調査を敢行してきた市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」の井上洋子さんたちの熱意を追った。「命の尊厳はどうなるのか」と政府に迫る市民団体の活動を取材した山口朝日放送の視点は鋭い。ジャーナリズムの活動として大変すぐれている。市民団体が遺骨を収容した功績は大きい。

海外から参加した精鋭ダイバーが事故で命を落とすという予期せぬ悲劇が起き、調査をこれ以上続けるかどうかが重く問われた。関係者たちは、「ダイバーが遺した知見を未来へ生かすことこそが供養になる」と、再び前を向く。日韓両政府も無視できなくなってきた遺骨調査のこれからに向けていく決意は頼もしい。最後に「ピーヤによって犠牲者の悲しみや存在が訪れる方にわかる。ピーヤの保存活動も続けていきたい」と井上さんは訴える。

連載「離島記者 報道砂漠で闘う市民メディアの挑戦」及び「屋久島町政をめぐる一連の調査報道」 武田剛 屋久島ポスト

『離島記者 報道砂漠で闘う市民メディアの挑戦』カバー写真

【講評】
朝日新聞で写真記者や編集委員を務めたのちに家族と屋久島に移住した筆者は、当初は環境取材を予定していたものの、町の幹部らの旅費不正清算や交際費による町長から国会議員への高額贈答問題など、町の行政をめぐる見過ごせない問題に直面し、住民と共に調査報道に特化したネットディア「屋久島ポスト」を立ち上げた。問題を指摘する議員はいるが議会は動かず、大手報道機関の目も届いていない中での市民メディアの挑戦だった。

69 本の記事からなる応募作は、町役場と対峙した10年にわたる取材を連載で振り返ったものだ。追及した問題の根深さがうかがわれると共に、「強要」の容疑で告発されて警察の取り調べを受けたり、議会の撮影取材を断られたり、みずからの報道機関との業務委託契約が終了に追い込まれたりと、市民メディアとして調査報道を続けることの困難も含め、読み応えがあった。

生活者でもある等身大の一人のジャーナリストの姿を通して、報じることの意味を改めて考えさせる連載であり、JCJ賞に値すると判断した。

「自治体による高齢者の連れ去り」に関する一連の報道 西岡千史 フロントラインプレス 掲載媒体・スローニュース

「自治体による高齢者の連れ去り」に関する一連の報道を紹介するスローニュースのウェブサイト画面

【講評】
行政が高齢者を守るどころか、連れ去り、家族に会わせず、不適切な財産管理を行う。なぜこのような人権蹂躙が日本各地で多発しているのか。筆者は他のメディアに先駆けておよそ2年にわたって、当事者や家族の声を丁寧に拾い上げることで、この問題を追い続けている。

認知症のひとが混乱のなかで警察に駆け込んだ場合、行政は当事者を保護するという名目で、精神科病院に強制入院させる。その後家族はお互いに長期間面会することが禁止され、家族の思い出の品は成年後見人の手で廃棄されることさえある。こうした行政措置の根拠となるのは高齢者虐待防止法、精神保健福祉法、成年後見制度だ。

高齢者の保護をめぐる行政の対応の知られざる闇。連載は反響を呼び、大手メディアが動き始めた。ネットメディアの可能性を広げる奮闘に拍手を送る。今後はなぜこんな理不尽が起きるのか、自治体が抱える構造的な課題について迫ってほしい。

【JCJ特別賞】

長期連載「憲法事件を歩く」 信濃毎日新聞編集委員 渡辺秀樹

長期連載「憲法事件を歩く」を紹介する信濃毎日新聞のウェブサイト画面

【講評】
これまで約6年間にわたって全国を歩き、憲法訴訟に立ち上がった人々や、元裁判官らを丹念に取材した100回を超える長期連載。長沼ナイキ基地訴訟、自衛隊イラク派遣訴訟、猿払事件、津地鎮祭訴訟、三菱樹脂事件、日の丸・君が代強制訴訟、旧優生保護法下の強制不妊訴訟、夫婦別姓訴訟など、対象は極めて多岐にわたる。

取材過程でスクープも生まれた。生活保護費の基準引き下げは憲法に違反するとし受給者たちが各地で起こした集団訴訟に対し、福岡地裁は訴えを退けたが、この判決の後の京都、金沢両地裁の判決文の一部は、福岡地裁判決文と誤字までが一緒の文章だった事実を報じた。裁判官がコピペしたと見られる。

取材の対象となった事件は多様だが、書く視座は一貫して憲法理念に立脚し、安定している。

憲法改正が言われるようになった昨今、焦点の9条などだけでなく日本国憲法の価値総体とその歴史的意味を現在の社会に改めて静かに考えさせる力作だ。

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